その記事の中で、ハッとさせられる内容が書いてありました。それが、
自分の好みだけは絶対に曲げてはならない。ここの軸を曲げてしまうと…… 超ストレート、超湾曲、超短歯、特大モンスター、顎のお化け、超美麗…… →だけど、全然好みじゃない虫 となってしまい、嬉しい結果とは言えない結果を得てしまうことになる。
これだ、と思いました。
ヤフオクやTwitterを覗くと、皆さんが作出された超大型幼虫や、ギネス個体、超極短個体etc.....
努力の結晶を見ることが出来ます。
そのような、ブリードでしか出せない(自然界では決して見ることの出来ない)結果を出しているブリーダーさんを私は心底尊敬していますし、ワクワクさせて貰っています。
と同時に、それは他人の結果であって、その結果以上の個体を狙おうとするのはあまり自分にとって得では無いのかもしれない、と思いました。
他のブリーダーさんからは、自分の理想に近づくための材料として、そしてモチベ向上のいい刺激をもらいつつ、自分の理想とする軸は別にしっかりと持っておかなければ、他人の作った価値観に振り回されてしまう。
「巷では評価される超理想個体」を作れたとしても、自分の理想から外れていては
「嬉しいんだけど…脳汁出るほどじゃないなぁ…」
となって、もったいないですよね。
逆に、巷ではあまり評価されないような個体であっても、自分の理想に近づけたのなら、最高に嬉しいに決まっています。
(私の場合ウガンデンシスでよくあります。羽化個体に最高にテンション上がってツイートしても、周囲は「なにそれ?カナブン?」って感じで温度差が生まれるパターンですね。涙)
ということで、完全に自分用の備忘録ですが、私の理想とするヘラクレスをモリモリにまとめました。
【スペック】
・全長:170mm(以上)
・胸角長:117.3mm(以上)
・胸角率:69.0%(以上)
・胸角突起前:13.0mm(以上)
・前胸幅:35.0mm台(以下)
・胸角占有率:37.1%(以上)
・化け値:6000(以上)
【要素】
・胸角
→鬼長い
→基部の張り出し強いけど、前胸幅は狭い
→横形状は緩やかなアーチ
→先細りがなく、真っ直ぐに伸びる
・頭角
→適度に太い
→頭角突起は5個欲しい
・上翅
→前胸幅に合わせてコンパクト
→金色
→模様は線タイプではなく斑点タイプ
・全長よりも、形状の細かさ重視
【歴代種親と歴代羽化個体でイメージアップ】
①ボディの大きさに対する胸角の長さの理想

無血統×AOUB.RUOGN-FF 162.5mm
角折れ状態で全長145mm、胸角率66.6%あった無血統♂にchaserさんの23Aをかけて「爆発長角」を狙ったライン。爆発性はないが狙い通り、前胸幅の狭い長角個体が羽化した。160mm台で前胸幅34.7mmという驚異のコンパクトさ。

ミニチュア 136mm
歴代種親で最も小さい個体。全長136.1mmという小ささから、胸角率67.5%そして前胸幅31.3mmという圧倒的長角ミニボディ。
集団飼育個体群から130〜140mm台で胸角率66%越えが数頭出てきたので、ミニボディ&長角安定率は高そう。
②上から見た胸角の形状の理想

ビートル王国さんから購入した163mm
残念ながら♂のペアリングが下手で、努力虚しく次世代に引き継げなかった♂。胸角突起前は13.3mm。
基部から先端までド派手に伸びた怪物級。標本はとってあるのでまた観察してみる。

FF0F×FF0F136 165mm
歴代種親最高化け値を誇る個体。前胸幅37.5mmから伸びる胸角突起13.5mmの胸角は最高のバランス。
前胸前部〜胸角基部の境界が曖昧なほど、基部が太い。ボディも胸角の太さの割にはコンパクト。
③横から見た胸角の形状の理想

UB67.0F.MD(ガルシア)×FF0FOAKS 155mm
歴代種親で最も好きな横形状を持っている個体。
分厚い基部から前にドッシリと伸び、緩やかなアーチを描く。先端もしっかりと詰まっている。
胸角突起も正三角形で、胸角に干渉せず非常にバランスがいい。
④頭角の形状の理想


無血統×アンビタル零-零DM 133mm
当方羽化個体。幼虫最大体重が100gも満たない、非常に小さな個体だが、基部の張り出し、胸角突起、胸角先端の圧は最高峰。加えて凶悪ギザギザな頭角を持つ。立派な胸角を持つ大型個体は、ほとんどの場合、頭角はあまり発達しない。頭角にもこだわっていきたい。

UB67.0F.MD(ガルシア)×FF0FOAKS 155mm
横形状でも紹介した個体。頭角基部付近の4つの発達に加えて、先端の細かい発達がある。加えて基部から先端にかけて太さがほぼ一定で非常にバランスがいい。
⑤上翅の模様、色合い



U71-No,128 アンビタル零究極
形状やサイズに着目すると、どうしても上翅の色合いは後回しになってしまう。ヘラクレスはサイズと形状、多くの亜種がいるため、あまり色合いには着目されないが、上翅が金色になるカブトムシはヘラクレスくらいである。そういう意味ではヘラクレスは色虫とも言える。世界一大きくて人気のカブトムシが、色虫でもあるなんて鬼に金棒である。
このような「黄色」より「金色」に近い色合いを固定化させたい。さらに斑点も無くし、完全なゴールドベタを拝みたい。
ひとまず、今思いつく理想はこんな感じです。
また思いついたら書き足します。
今回出した理想形状は、「片方が秀でているからもう片方は犠牲になっている」という状態です。例えばビートル王国さんの個体は、最高にカッコイイと思った方も少なくないと思います。しかし、この個体を横から見たらカッコイイというわけではありません。
前胸幅は広いし、ボディはデカい。1頭目に紹介した個体は、ボディは小さく胸角ですが、胸角は若干捻れていて細いし、美形とは言いにくい。
「神は二物を与えず」というように、各要素は
トレードオフに近い関係性があることがわかります。
神は言います。「欲張るなよ」と。
しかし、欲張ってこそのブリード。所詮は自己満足の世界。全部極めて自分だけの超理想を追い求めるのがブリードの醍醐味であると私は考えます。YYさんのように、もっともっと、もっともっとブリードと、ヘラクレスと向き合い、ストイックに結果を追い求めること。そういうブリーダーになりたい。直感がたまたま当たったことを「自分の手柄」とせず、「なぜ当たったのか?」を突き詰めるようになりたい。まずサイズを狙うのではなく、基本的な形状にこだわっていきたい。
今回も読んで頂きありがとうございました。