結論から。

ブリーダーが自由な名前をつけたらいい。が、僕は(いまのところ)つけない。

野菜の品種化、マグロの名産化、和牛のブランド化などの「名前を付けるために厳格な審査が必要な団体的なもの」はニジイロ界隈には存在しない。そのため、ブリーダーが自由な名前をつけたらいい。

青っぽい紫紺をブルーと呼んだり、(管理名:〇〇)だったり、〇〇〇(漢字)だったりを付けるのは自由だ。


しかし僕はやらない。自分の育てた個体群に自分だけの名前を付けたいという気持ちは大きい。でも出来ない。すべきでないと思っている。少なくともインラインを3世代続けた程度の、遺伝的独立性の薄い個体に名前を付けて人様に売ることは出来ない



今回の記事では、血統名、管理名、その他諸々の名前は全て「従来の流通する個体群と差別化を図るもの」という観点から言うと、一緒くたに考えることが出来る。すべて引っくるめてそれらを「オリジナルネーム」とでもしよう。


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この個体を「スペシャル武者無骨ブラウン剛力血統」と名乗っても良いはずだ。一部の人は眉をひそめるかもしれないが(もちろんしません)。


僕がオリジナルネームをつけない理由は、レコード、スーパーレッド、青紋、青紋ホワイトアイ、超光沢の紫紺、青紋紫紺などを入手し、自分で累代していく中で「これらの血統は途方もない年数と厳選と運の良さを経て、誰かが根気よく作り出したものだ」ということを、痛感したからだ。


自分がブリードするニジイロクワガタは全て、僕が飼育を始めるよりずっと前から飼育をし続けた人の作った土台があるからであり、僕は彼らの土台で遊ばせてもらっているに過ぎない。そう感じるのだ。特に青紋系はその傾向が強い。

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「すごくハイクオリティな青紋」に見えるけど、実は紫紺が入った青紋紫紺。飼育してみないと区別は困難だ。これは「管理名:スーパーブルー」にしよう(しません)


今僕はレッド青紋、ダークレッド青紋、ダークレッド青紋ホワイトアイ、青紋紫紺ホワイトアイ、レッド紫紺青紋ホワイトアイを作ろうとしている。それらは誰かが作った血統が必ず必要になる
レッド青紋ホワイトアイを作るなら、青紋血統、ホワイトアイ血統と、なるべく濃いレッド血統(ダークレッドだとなおよい)が必要になる。青紋ホワイトアイ血統がいるなら作成はもっと早くなる。今ではレッド血統のダークレッドホワイトアイが流通しているから、それを使えばさらに早い。

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青紋ホワイトアイ。これを完成させたブリーダーさんは相当飼育頭数を抱えただろうし、何年もかけて厳選をしたことは容易に想像出来る


それらを組み合わせて、何世代累代したら出来るだろう?何年かかるだろう?…と考えると、色んなことに気づく。

「今のPMR-R(有名な赤血統)、17世代もインライン繰り返してるのか……!?」

「青紋遺伝子とホワイトアイ遺伝子、かけあわせたら1/16の確率でしか生まれないじゃん…500頭育ててたったの30頭!?」


といったふうに、今ある血統が、途方もない努力と執念によって作られていることに気づくのだ。そして、彼らの努力をお金で買える資本主義にも感謝である。



僕にそのようなことが出来るだろうか?子の世代が安定しないのがわかっていて、何年も累代しなければいけない(途中で絶えるかもしれない)ことが前提にあるのに、完成を信じて根気よく累代を続けられるだろうか?


続けたいと思う。が、出来ないだろうな…。結局僕は、先人たちが作り出した血統の「美味しい部分」だけを頂いて、遊ばせてもらっているだけなのだ。残念ながら今のところは…。そう痛感した。



正直なところ、従来の血統と大差ない個体群に対してオリジナルネームを付けている(更に販売している)人には違和感を感じている。
「これは血統名ではなく、管理名です」という人も同様だ。管理者であろうと「この個体群は、従来のものとは違うんですよ」と、名付けによって他と差別化していることには変わりないので、同様に違和感がある。


なぜそこまで「別の名前」を付けたがるのだろう?なぜそこまで名前でオリジナリティを出したいのだろうか?あなたの販売している個体は、先人の作り出した個体と遺伝子的に大差ないと僕には見えるんだけれど(僕がブリードしている紫紺(青系)のほうが青くね?)…と思うことがヤフオクでは頻繁にある。

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青っぽい紫紺の中で、これより青みの強い個体は見たことがない
「スーパーヒスイブルー」とでも名付けようかな(しません)


青紋と紫紺グリーンとの区別は、実際に飼育し、羽化個体を何頭も見比べてみないと難しいだろう。今ニジイロクワガタを飼育している人の中で、青紋と紫紺グリーンの明確な区別を付けられる人は2割くらいではないだろうか?


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オス:青紋遺伝子なし メス:青紋遺伝子あり
全く別のラインです。そっくりですよね。色々飼育してみると前胸部の質感で青紋が入っているかどうかがわかったりわからなかったりします


多くの人がそのような現状(区別がつかないことは決して悪いことではなく、わからない人が沢山いるからこそ、安易にオリジナルネームを付けたりせず、わかるように説明をする努力こそが優先ではないか)だから、各々が好きにオリジナルネームをつけて販売すると

〇〇って書いてあるんだから特別な個体に違いない!」と判断する人が多いことは想像に難くない。


現に去年、一昨年は紫紺ピカールと紫紺(青系)のオリジナルネームが急増し、オリジナルネームのついた個体はかなりの高値で売買されていた。それらは既存の紫紺ピカールとどう違うのか?どこまで違うのか?
紫紺(青系)ピカールとどう違うのか?どのような個体を選抜し、何世代累代し、兄弟ではどのようの色味が羽化しているのか?そういった作成者(ブリーダー)の努力や理念が全く見えてこない出品がすごく多いと感じた。

オリジナル血統が増え、「名前ばかりが豪華になる懸念」を以下のブログで書いた。


紫紺ピカール系は、紫っぽいのと青みのあるものがあり、オリジナルネームの血統に大した独自性はないことに関する記事






オリジナルネームを付けることは自由だ。だが、

他血統との明確な差が見いだせないものに皆がどんどんオリジナルネームを付けていたら、収拾がつかなくならないか?

既存の他血統との差が不明確な個体のオリジナルネーム出品が溢れることは、ニジイロクワガタ飼育界隈において、いいことと言えるのか?僕はあまりそうは思わない。


では「他血統との明確な差」とはなんだろう?この定義も人によって異なる。僕の考える「明確な差」のひとつは、外見的な差よりも遺伝子要素であり、青紋遺伝子を持つか否か、ホワイトアイ遺伝子を持つか否かだ。これらははっきりと区別出来る。


あとは別の色パターンとアウトブリードして、子がどのような色味で出てくるのかも考える。例えば紫紺とダークレッドをかけたら、子は紫紺にもダークレッドにもよらず、パッとしない濁った色になる(過去ブログのどこかで紹介していると思う)。ホワイトアイと非ホワイトアイをかけたら、子はヘテロになるためブラックアイになる。では紫紺(青系)とダークレッドは?紫紺とダークレッドをかけた色合いとほぼ同じになったし、紫紺(青系)と紫紺をかけたら子は紫紺だった。僕が青っぽい紫紺に遺伝子的な独自性を感じないのは、このような観点からでもある、


では青っぽい紫紺が、遺伝子的に紫紺と「完全に一致」といえるのか?完全に一致、とは言えないかもしれない(知らない遺伝形質があるのかも)。
しかし独立したものと考えるには、まだ早いと思う


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青紋紫紺のパターンのひとつ。いわゆる「ブルー」よりもよっぽど「ブルー」じゃないですか?


既存の血統と、そうでない血統を分ける基準は人によって異なる。「ここからここまでは既存で、ここからはそうでない」と、はっきり分けることが難しい。生き物だし、似ていても同じものはいないし、世代交代の度に遺伝子要素は変化する。「結局モヤッと終わるじゃないか」と思われた方、申し訳ない。モヤッと終わらせて頂く。僕もはっきりと分けたいのだが、そうもいかない部分が多いのだ。だから、ブリーダーが自由に名前をつけたらいいと言いつつも、違和感が残るのだ。だからこそ、今後も議論は続くだろう。


僕の主張を押し付けるつもりはない。自由につけたらいい。いいんだけど…この違和感。