2024年12月

今年もあと1週間。朝は寒くて何もする気が起きないが、僕はこの年末の浮かれた空気が好きだ。そして今日はクリスマスイブだが、僕は長期休暇を有効に使ってを詰めている。………今日はインブリードとアウトブリードについて書こうと思う。

 

インブリードとは、人間では絶対タブーな近親交配という交配方法で、兄弟同士、または親と子などの組み合わせで次世代を繋げるという方法だが、カブトクワガタ(カナブン)界隈ではごく当たり前に行われており、 馬、犬、鶏などでもインブリードは行わせるようだ。カブトクワガタの場合、特に流通の少ない種類の存続(別血統を用意するのが難しい)や、意図的に血を濃くする場合に行われる。

 

意図的に血を濃くする目的については、その個体が持っている形質を次世代に強く引き出すため、というのがほとんどだろう。角の太いヘラクレスを作りたかったら、羽化した角の太いオスと兄弟にあたるメスのインブリードを繰り返し、角を太くしていく(そうしてあのバケモノじみた個体が作られた)。アゴの太いオオクワガタを作る場合も同様だ。

 

ニジイロクワガタでもインブリードは重要な意味を持つ。野外品の緑と赤から構成されるノーマルのニジイロクワガタを、「より緑」を目指してインブリードして今のグリーン血統があるし「より赤」を目指してインブリードして今のレッド血統がある。野外品輸入から25年の間、持ち前の個体のみでインブリードを重ねてきたから、もう日本に流通する全ての個体が兄弟みたいなものとも言えるが、現在世界中にいる全ての牛の先祖は80頭という説もあるから…この例えはあまり適切ではないか…日本に輸入された、たった数頭の祖先からニジイロクワガタは始まっている。そういうことだ。

 

話を戻そう。つまりインブリードは、角を太くしたりアゴを太くしたり色を強く出したりと、現在の形質を強化する効果があると言えるのだが、残念ながらデメリットもある。その一つが、奇形が生まれやすくなるという問題だ。似た遺伝子を持つ個体同士で交配した場合、遺伝子多様性が減少し、成長や健康に害をもたらすことが原因らしい。専門的なことは各自調べて頂きたい。

 

インブリードが原因とされる負の影響は様々だが、カブトクワガタだと多いのが、翅パカではないだろうか。ヘラクレスヘラクレスを中心にブリードしていた時、オスの翅パカがとにかく多かった。翅パカも蛹爆発も幼虫の頭部の奇形もあった。体重を載せすぎたというのも原因としてあるだろうが、一番は限られた優秀な血統を濃くしていくことによる奇形だと考えている。

 

それに比べると、ニジイロクワガタはインブリードに強いと言えるだろう。現在ラピスブルー(青紋)血統PMR-R(レッド)血統は、インブリードを17回以上繰り返していることになるが、外見上目立った奇形が現れる確立は低いし、飼育していて産卵数が少ないと感じたことはない。何なら他血統よりよく産卵するし、強いまである。ニジイロクワガタのインブリード耐性は多種と比べても異質かもしれない。連作障害を起こすどころか、連作するごとに立派に育っていくサツマイモのようだ。

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PMR-R血統のオスF17。インブリード17世代目ということは、野外品輸入とほぼ同時期からインブリード厳選が始まったといえる。

だがそんなニジイロクワガタにも翅パカ傾向の高い血統はある。その一つが「ピカール」だ。本来ならつや消しの前胸部も、上翅と同様に光沢がある血統のことで、ニジイロクワガタの中で最も人気だ。今年は特に紫紺ピカールの人気が半端ではなかった。

 

そんなピカール血統だが、飼育していて明らかに翅パカ率が非ピカール血統と比べて高い。というのも体型が横に広がる傾向にあるため、翅をしまうのが非ピカールよりも難しいからではないかと考えている。また、横に広がりやすい故にアゴが伸びにくく、全長を伸ばしにくいという特徴もある。非ピカールなら大歯型になるような全長でも、ピカールだと中歯、という場合が多く、極彩色では60mmを超えるのが一つのボーダーとなっている。

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紫紺ピカール61.3mm。居食いをしてくれたためか60mmを越すことが出来た。

ピカール血統のルーツは、某ショップさんが突然変異的に前胸部に光沢がある個体を羽化させたところから始まっている。その際、前胸部の光沢と共に「横幅が広くなる」形質も受け継いでしまったせいで、今の体型があるのではないかと考えている。

 

現在、多くのブリーダーの厳選と累代により、光沢が非常に強いピカール血統各色が流通している。それらを入手し、インブリードすれば次世代も強い光沢を持った個体が得られるだろう。だがそれだけでは長く続かないのではないかと思う。徐々に翅パカ率が高まって、最後は絶える未来が見える。それはどうしても避けたい。そのためのアウトブリードだ。

 

去年5月、光沢の強い紫紺ピカールF3を入手し、インラインの他にアウトラインを組んだ。インラインはもちろん超光沢×超光沢のF4で、アウトラインは超光沢×微光沢のF1だ。ここでの微光沢というのは、恐らくだが「ピカール由来の光沢ではない」気がするので、非ピカールだと認識して問題ない。ピカール由来の光沢ではない件についてはまた次回。

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超光沢F3×超光沢F3 のインブリードF4は、一頭の例外もなく超光沢で羽化した。オスもメスも全面に光沢があった。また、前胸部の色はオスは全て暗黒色、メスは暗緑色が数頭いて、大半は暗黒色だった。体型はやはり非ピカールと比べると横に広がったが、翅パカは30頭程度いるうちの4頭程度だった。特筆して多くはないが、非ピカールと比べると多い。

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上記と同じ紫紺ピカール61.3mm。インラインのF4で、若干上翅幅に広がりがある。光沢は非常に強い。

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続いて超光沢F3×微光沢F1のアウトブリード。前胸部の色はかなりバラつきがあり、暗黒色と暗緑色が半々くらいだった。体型は全頭ほぼスリムで、なんと翅パカ個体はいなかった(蛹化直前に頭が下になり奇形化した個体はいたが)。そして一番驚いたのが、超光沢かつスリムに羽化した個体が数頭いたことだ。アゴも細部まで発達し、よく伸びている。光沢が強く、スリムで、羽化不全率も低いという「いいとこ取り」を実現した。まあ対象の個体数が少ないので、一概に決めつけることは安直だが、アウトブリードの必要性と可能性を痛感した。

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アウトライン52.9mm。50mm台前半というのは、非ピカールなら大歯が多いが、ピカールでは大歯と中歯で別れるところではないかと思う。しかしこの個体は大歯であり、ピカールにはあまり見られないアゴの湾曲まである。体型はスリムで、非ピカール個体と遜色ない。しかし光沢はインラインと同じくらい強い。いいとこ取りをしたような個体だ。

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画像に(オス5%)とあるように、アウトブリードでいいとこ取り出来たオス個体は羽化した5%程度で、あとは無光沢と微光沢な個体が95%だ。メスの超光沢比率は体感30%くらいだ。

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微光沢個体。普通の紫紺個体と比較すると鈍い光沢はあるが、インラインには及ばない。体型はスリム。またアゴの発達も良好。前胸部が若干緑がかっているため、前胸部の色は微光沢個体の遺伝子を受け継いでいるようだ。

欲しい形質が安定して継承されるインブリードと比べて、アウトブリードには「ハズレ」が付きまとう。特に色虫はその傾向が強いのではないだろうか。「ハズレ個体(狙った形質が継承されないという意味で)」が羽化するリスクがあるアウトブリードは、出来ればしたくない(ピカール以外にも、青紋とのアウトブリードなんかもそう)というのは皆同じだ。だがしないといつか絶える。ジリ貧状態だ。

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横に広がりがあるゴールドピカールのオス。特にゴールドとグリーンピカールは横に広がる傾向が強いと感じる。もちろんブリーダー(保有者)のラインによって傾向に差はあるだろうが、微々たる差ではないか…と思う。

野外品の輸入が絶望的なカブトクワガタは沢山いる。ヘラクレスヘラクレスやニジイロクワガタもその1つだ。これからも長く飼育を楽しむためには、先人が作ってきた血統をインブリードするだけではなくて、アウトブリードで血を整えることは必須だ。

 

狙った形質が出ず「ハズレ」を引くことになるかもしれない。だが、いいとこ取りした個体を手に入れるチャンスでもある。同産地、同種の交配限るが、ぜひ取り入れて見て欲しい。

 

ニジイロクワガタはヘラクレスやオオクワ等と違って近縁種が輸入されていない(近縁種は一応いるらしいが激レアらしい)し、産地もオーストラリア ケアンズ(稀にキュランダまで入っていることがある)の一択だから交雑を心配がない、というのもいい所。

ニジイロクワガタを本格的にブリードし始めて約1年半が経過した。2024年もあと少し。夏を過ぎるともう年末になっているのは去年と変わらない。ブリードに関して、今年は色んなことがあったので、今回は思い返してしみじみしようと思う。

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恒例の文字ばかりで合間に写真を入れるやつ。本内容と写真は関係ありません。

・イベント出展

これが今年の大きな変化といえる。7月に浜松町でナンバージャック様主催のSBと、8月に浅草橋でセルヴォラン君主催のインセクトポート東京に出展させて頂いた。元々出展に至った経緯は去年の10月頃、InstagramのDMでセルヴォラン君に「イベント興味ありませんか?」と誘っていただいたことから始まった。

 

初のイベントのSBでもセルヴォラン君と共同出展し、ドキドキしながらプリンカップに床材を詰め、ラベルを貼って準備していたのをよく覚えている。買ったことは幾度となくあるが、売ったことは無い。値段を付けるにもかなり苦労した。

 

「売れなくても色んな人に見てくれたらいいな〜」という気持ちで出展したためか、初めて自分の虫が売れたときは鳥肌が立った。それくらい嬉しかった。「自分で作った(育てた)ものを、対価を払って買ってくれた」という実感は生まれて初めてで、こんなに嬉しいものなのか…と、衝撃を受けた。さらに「いつもInstagram見てます」「ブログ見てます」と言って下さる方がいて、極端ではあるが自分を全面的に認められた気がした。

 

来年もインセクトポートが2/23に予定されており、それにも出展させて頂く予定だ。前回以上にラインを増やし、標本も(技術的にはまだまだだが)持っていこうと思っている。やはり対価を頂くわけだから、しっかりとした説明が出来るよう前回以上に準備していきたい

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仲間

これはイベント出展と重複するが、多くのニジイロクワガタブリーダーの方々と知り合った。セルヴォラン君やドリアンコンロ君、YTTさんや、台湾のブリーダーさん、さらには農家さんまで様々な方と知り合い、かけ合わせによる色の出方や、パターンの違いによる育ちの差など色んな事を教えて頂いた。彼らは僕に持っている知識を積極的に分けてくれるし、質問にも答えてくれた。彼らのおかげで、3年かかってもわからなさそうなことが1年でわかった気がする。来年は恩を返せるようになりたい。

 

セルヴォラン君は僕よりも年下で、イベントの主催をしている。彼の行動力を見ていると、自分の行動次第で割と何でも出来るんじゃないかとさえ思う。知らない人に声をかけるのは怖い。だが行く。その積み重ねによって(のみ)自分の理想は近づいてくるのではないか

 

あとブログは書いておいた方がいいとすごく思う。セルヴォラン君も僕のブログを読んでくれて、僕を知ってくれた。自分の考えを発信するのはInstagramやXが主流だけれど、それらは文字数制限があったり、すぐに別の人の投稿に飛べるため深く読まれにくい。

 

しかしブログは、終わりまで「ずっと俺のターン」なので、飽きられるまでは読んでもらえる。文字数制限も基本ないので、自分の考えをつらつらと書くことが出来る。SNS主流な今、あえてブログをやる価値はあると思う(ブログはSNSでした)。

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とりあえず全部試すことの価値

ニジイロクワガタの幼虫は何でも食う。何でもと言ったら肉も野菜も食うのかよと揚げ足を取られそうだが、どんな発酵度のマットでもどんな種類の菌糸でも食うという意味だ。だから育てやすいのだが、その反面最適解が分かりにくいとも言える。

 

去年から今年にかけて、様々なメーカーのマットや菌糸を試してみた。マットは水分量を変えたり詰め圧を変えたりといった微調整をつけてもいる。それで大きな変化や法則が見えてきたかと言うと、そうでもない(やはり何でも食うので)。そうでもないのだけれど、明らかに育ちにくかったり死にやすい環境は避けられるようになった(小並感)。

 

ニジイロクワガタは、BE-KUWAによると飼育者Sで非常に多いため、育てかたも様々だ。飯島店長はレコード個体差をカンタケ菌糸で羽化させたが、マットで十分大きくなるという人もいる。だからこそ全部試す。あまり適さないようなマット、菌糸もあえて自分で試すことで、自分の知識になる。説得力にもなる。あえて全部試すことは無駄が多いし、バカバカしいとも言えるけれど、やる価値はあると感じた。

 

今は、調子に乗って組みまくった産卵セットから得られた幼虫をボトル投入してはボトルにマットを詰めるという行為をただひたすら繰り返している。興味のない人からしたら給料を貰っても嫌な労働だろう。だが、1年後の羽化した個体を想像すると耐えられる。むしろ前に進んでいる感覚が心地よくさえある。

 

来年羽化する個体のために、2025年も引き続き、ひたすら心を無にしてボトルを詰め続ける年にしたい。

来年もよろしくお願いいたします。

紫紺(青系)今期の種親が活動を開始した。

63.2mmの大型個体である。大型とはいえ、レコードはあと丁度7mm大きい。7mm…圧倒的だ。

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スリムではないが、歪ではないマッシブな体型。アゴはよく伸びきっている。個人的には前胸のヘリの発達が好きである。前胸幅が広い個体ほどヘリの発達が見られる傾向がある。

 

ニジイロクワガタも他のクワガタのように、大きさによってアゴの発達具合も変わるのだが、蛹室が狭かったり羽化でアゴを伸ばせなかったりすると、アゴが湾曲することがある。今期はPMR-R(レッド血統)の大型オスの湾曲が多かった印象がある。血統によって湾曲傾向があるのだろうか?
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上翅中央の青もかなり強い。強いのだが、親の青みは異常だった。紫紺よりも青い面積のほうが広かった。ヤフオクで入手し、インラインで組んだのだが、子で親の上をいく個体は羽化しなかった。サイズは約3mm増えたので良し。

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親。こう見ると青のトーンがこちらのほうが明るい。〆て標本にしたのだが、この色味は失われてしまった。ニジイロ仲間も、この色味をまた同じラインで羽化させるのは難しいのではないか…と言っていた。しかしそれは同じラインでの話で、別ラインでかなり近づけるのではないか…と企てている。

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それでも、この発色もかなり好みである。青みのない通常の紫紺と共に、これからも続けていきたい。目立った羽化不全は出ず、体系的にも比較的健康そうなラインではあるので、次世代は菌糸も用いて65mmを目指す。いや…もう少し…大きめで……お願いします…。

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裏の色味は親にそっくり。

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