2021年11月

今夏10♀と掛け合わせる予定だった♂
U71U6I.Y170.T-117vol.7


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角折れ前174mm、基部極太のモンスター

が亡くなってしまい、今夏、As.さんから沢山購入させて頂いた♀が未亡人状態になっていました。

そこで新たなる♂を発見すべくヤフオクを巡回していると「これは…!?」という個体を発見しました。


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詳しい方ならどなたの個体かは分かるはず。

極太角折個体」として出品されていましたが、
私はそれ以上に「前胸幅の狭さ」に注目しました。

しかし、撮影するアングルによって印象が全く変わるのがヘラクレス。出品写真が真上アップと真横の写真ばかりで、ボディに寄って撮っているため胸角基部が太く見えているだけ、という可能性もありました。
そのため、かなりギャンブル的に入札し、非常に安く落札させて頂くことが出来ました(角折はとにかく安い。)。

種親補強は妥協したくないので、購入金額はかなり覚悟しているのですが、毎度惹かれる個体のB品率が高いため、図らずとも安く落札出来る場合が多いです。
(特に角折れは、繁殖能力的には全く問題ないことが多く、優秀個体が格安で入手出来るためオススメです。)


11/20 個体確認
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まず手に持ってみました。
第一印象は「角はそんなに太くない
加えて
胸角基部のクビレ(前胸幅に対して胸角基部が発達している個体ほど、胸角基部に現れる溝のこと)も弱いし、前胸幅も広そう


ギャンブル失敗か…と思いました。
が、いや待てよ。



やけにボディが小さくないか!?






歴代種親の1Aを思い出すほどのボディの小ささです。

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↑1A
しっかりした太さの長胸角&ミニボディで、化け値5000台の優秀個体だった。


すぐに胸角突起前を計測しました。

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13.0mm
バッチリ太いやん…
(ノギスを当てながらの写真が撮りたかったんですが、無理でした

角が折れているせいで、太さを感じませんでした。
じ、じゃあ13mmという太さでこのボディの幅
(前胸幅)は……………?

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35.2mm


激狭。最高過ぎる超ミニボディ。
胸角占有率36.9%


歴代種親の胸角占有率最高が出ました。


好きなお菓子を口に入れた瞬間を遥かに超える、
大量の脳内快楽物質が一気に放出しました。


これこれ。こういうのです。欲しかったのは。


ぶっとい角と小さなボディを合わせ持つことで、
相対的にも角が太く見えるという強と弱が共存している個体



続いて胸角長を測ります。
角折れ前が160mmだったらしいので、現在の全長(106mm)と比べて+54mm。

現在の胸角が53.2mmなので、+54mmして
角折れ前の胸角長は107.2mm。

107.2mm÷160=0.67

67%


また脳内快楽物質が放出しました。
胸角率も高い……!!


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この個体が他個体と比較して優秀である点は

ボディの幅に対して角が太いこと
全長に対して角が長いこと
全体に対してボディがちいさいこと
化け値が高いこと

この4点です。


目標は、この要素を兼ね備えつつ、
カッコ良さを加えることになります。




YYさんのブログを読んで痛感することは
スペック(数値で表すことが出来る要素)ばかりに
気を取られて「カッコよさ」をおざなりにしていた
ことにあります。

確かにスペックは、理想のヘラクレスを作るのに重要な要素です。しかし最も大切にすべきは


グッとくる魅力があるかどうか


結局、最も重要なのは心を動かす魅力であり、主観であり、感情。

陸上競技(記録)じゃあるまいし、ギネス(数値)にこだわってるわけでもない。

スペックは、カッコイイ個体を生み出す確率を上げる要素に過ぎない。主人公が泥臭く努力する姿に感情移入するから感動するのである。


最高スペックのこの種親で、さらにカッコよさを追求した個体を目指していきます。


ヘラクレスブリードは楽しい。奥が深すぎる。


今回も読んで頂きありがとうございました。









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余談
普通は角折れちゃった時点で
「角折れちゃった〜残念」で終わっちゃいますよね
(落札価格が物語っていますね)。

しかし別の視点を持てば、多くの価値を見いだせる。
自分だけの価値を見いだす楽しみを見つけられる。
としみじみ思いました。

ここ最近虫を触れていませんが、尊敬するホペイブリーダーのYYさんのブログを片っ端から読んで、刺激を貰っています。

その記事の中で、ハッとさせられる内容が書いてありました。それが、

自分の好みだけは絶対に曲げてはならない。ここの軸を曲げてしまうと……           超ストレート、超湾曲、超短歯、特大モンスター、顎のお化け、超美麗……           →だけど、全然好みじゃない虫               となってしまい、嬉しい結果とは言えない結果を得てしまうことになる。



これだ、と思いました。
ヤフオクやTwitterを覗くと、皆さんが作出された超大型幼虫や、ギネス個体、超極短個体etc.....
努力の結晶を見ることが出来ます。


そのような、ブリードでしか出せない(自然界では決して見ることの出来ない)結果を出しているブリーダーさんを私は心底尊敬していますし、ワクワクさせて貰っています。

と同時に、それは他人の結果であって、その結果以上の個体を狙おうとするのはあまり自分にとって得では無いのかもしれない、と思いました。

他のブリーダーさんからは、自分の理想に近づくための材料として、そしてモチベ向上のいい刺激をもらいつつ、自分の理想とする軸は別にしっかりと持っておかなければ、他人の作った価値観に振り回されてしまう。

「巷では評価される超理想個体」を作れたとしても、自分の理想から外れていては
「嬉しいんだけど…脳汁出るほどじゃないなぁ…」

となって、もったいないですよね。

逆に、巷ではあまり評価されないような個体であっても、自分の理想に近づけたのなら、最高に嬉しいに決まっています。
(私の場合ウガンデンシスでよくあります。羽化個体に最高にテンション上がってツイートしても、周囲は「なにそれ?カナブン?」って感じで温度差が生まれるパターンですね。涙)

ということで、完全に自分用の備忘録ですが、私の理想とするヘラクレスをモリモリにまとめました。


【スペック】

・全長:170mm(以上)
・胸角長:117.3mm(以上)
・胸角率:69.0%(以上)
・胸角突起前:13.0mm(以上)
・前胸幅:35.0mm台(以下)
・胸角占有率:37.1%(以上)
・化け値:6000(以上)



【要素】

・胸角
→鬼長い
→基部の張り出し強いけど、前胸幅は狭い
→横形状は緩やかなアーチ
→先細りがなく、真っ直ぐに伸びる



・頭角
→適度に太い
→頭角突起は5個欲しい



・上翅
→前胸幅に合わせてコンパクト
→金色
→模様は線タイプではなく斑点タイプ



・全長よりも、形状の細かさ重視




【歴代種親と歴代羽化個体でイメージアップ】



①ボディの大きさに対する胸角の長さの理想

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無血統×AOUB.RUOGN-FF 162.5mm
角折れ状態で全長145mm、胸角率66.6%あった無血統♂にchaserさんの23Aをかけて「爆発長角」を狙ったライン。爆発性はないが狙い通り、前胸幅の狭い長角個体が羽化した。160mm台で前胸幅34.7mmという驚異のコンパクトさ。

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ミニチュア 136mm
歴代種親で最も小さい個体。全長136.1mmという小ささから、胸角率67.5%そして前胸幅31.3mmという圧倒的長角ミニボディ。
集団飼育個体群から130〜140mm台で胸角率66%越えが数頭出てきたので、ミニボディ&長角安定率は高そう。



②上から見た胸角の形状の理想

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ビートル王国さんから購入した163mm

残念ながら♂のペアリングが下手で、努力虚しく次世代に引き継げなかった♂。胸角突起前は13.3mm。
基部から先端までド派手に伸びた怪物級。標本はとってあるのでまた観察してみる。

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FF0F×FF0F136 165mm

歴代種親最高化け値を誇る個体。前胸幅37.5mmから伸びる胸角突起13.5mmの胸角は最高のバランス。
前胸前部〜胸角基部の境界が曖昧なほど、基部が太い。ボディも胸角の太さの割にはコンパクト。



③横から見た胸角の形状の理想


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UB67.0F.MD(ガルシア)×FF0FOAKS 155mm

歴代種親で最も好きな横形状を持っている個体。
分厚い基部から前にドッシリと伸び、緩やかなアーチを描く。先端もしっかりと詰まっている。
胸角突起も正三角形で、胸角に干渉せず非常にバランスがいい。



④頭角の形状の理想


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無血統×アンビタル零-零DM 133mm

当方羽化個体。幼虫最大体重が100gも満たない、非常に小さな個体だが、基部の張り出し、胸角突起、胸角先端の圧は最高峰。加えて凶悪ギザギザな頭角を持つ。立派な胸角を持つ大型個体は、ほとんどの場合、頭角はあまり発達しない。頭角にもこだわっていきたい。

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UB67.0F.MD(ガルシア)×FF0FOAKS 155mm

横形状でも紹介した個体。頭角基部付近の4つの発達に加えて、先端の細かい発達がある。加えて基部から先端にかけて太さがほぼ一定で非常にバランスがいい。



⑤上翅の模様、色合い


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U71-No,128 アンビタル零究極 

形状やサイズに着目すると、どうしても上翅の色合いは後回しになってしまう。ヘラクレスはサイズと形状、多くの亜種がいるため、あまり色合いには着目されないが、上翅が金色になるカブトムシはヘラクレスくらいである。そういう意味ではヘラクレスは色虫とも言える。世界一大きくて人気のカブトムシが、色虫でもあるなんて鬼に金棒である。

このような「黄色」より「金色」に近い色合いを固定化させたい。さらに斑点も無くし、完全なゴールドベタを拝みたい。








ひとまず、今思いつく理想はこんな感じです。
また思いついたら書き足します。

今回出した理想形状は、「片方が秀でているからもう片方は犠牲になっている」という状態です。例えばビートル王国さんの個体は、最高にカッコイイと思った方も少なくないと思います。しかし、この個体を横から見たらカッコイイというわけではありません。
前胸幅は広いし、ボディはデカい。1頭目に紹介した個体は、ボディは小さく胸角ですが、胸角は若干捻れていて細いし、美形とは言いにくい。


神は二物を与えず」というように、各要素は
トレードオフに近い関係性があることがわかります。
神は言います。「欲張るなよ」と。


しかし、欲張ってこそのブリード。所詮は自己満足の世界。全部極めて自分だけの超理想を追い求めるのがブリードの醍醐味であると私は考えます。YYさんのように、もっともっと、もっともっとブリードと、ヘラクレスと向き合い、ストイックに結果を追い求めること。そういうブリーダーになりたい。直感がたまたま当たったことを「自分の手柄」とせず、「なぜ当たったのか?」を突き詰めるようになりたい。まずサイズを狙うのではなく、基本的な形状にこだわっていきたい。

今回も読んで頂きありがとうございました。

今までは頭数が多すぎて、様々なラインを一緒くたに集団飼育していました。なので現在、同じケースから様々な色を持つ個体が続々羽化しています。

これはまさにウガンガチャだなと思い、ガチャで排出された個体の

色のクオリティ
柄(ベタかそうでないか等)
サイズ(全長)
形状(体幅などボリューム)

を評価して、採点していくという形でやっていこうと思います。


ちなみに今年最高点数はこの個体。

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モスグリーンな前胸に、群青色の上翅。
さらに横幅にボリュームがあり、サイズもそこそこな72mm。前腕がやたら太く、ギザギザのブレードかナタのようになっています。


点数は…76点としておきます。
飼育者が少なく、サイズもカラーもまだまだ未開拓な本種なので、初回は厳しめに。



前胸レッド、上翅ブルーのベタカラーツートン80mm
目指して、力入れていきます。

お久しぶりです……

更新は出来ていませんが、時々チェックはしています。ランキングはほとんど10位以内で、たまに5位に入っていたりして、見てくださる方に感謝しながら毎日必死に生きてます。

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10月に「1ヶ月ぶりの虫作業」と言っていた時から、また1ヶ月経ってしまいました。。

理由は、本職の昇進試験と、臨時的な職場移動による多忙で、時間的なリソースを全く虫につぎ込めずにいます。


今までは田舎の職場で、平日はのんびり働き、休日は帰って虫作業…というのがルーティンでしたが、
現在は都会の本部的なところで滅茶苦茶な仕事量をこなすハイスペックな人々の中で命削ってます。
(退職したら詳しく書きたいです。)



「退職じゃなくて昇進しないか?」
「お前なら試験受かるよ!」
「お前には期待してる」



と、就職してはや4年、ありがたい言葉をかけてくれる上司のためにも、人生経験のためにも、今回昇進試験に挑んだのですが

朝から夜まで練習し、声は枯れて完全に出なくなるわ、練習で肉離れになるわで…この1ヶ月は今までの人生の中でも上位に食い込むハードさでした。



さて、そんな怒涛の1ヶ月を終えたわけですが…
(合否が出るのはしばらく後です)






ヤマを乗り越え、安堵すると共に…










あれ、俺何で仕事してんだ?


ヘラクレスの研究のために仕事してるようなもんなのに、仕事のために研究が全く出来てない。


あれ……?









という気持ちが一気に込み上げてきました。
ここ1ヶ月は忙し過ぎて「とにかく試験を終える」という一心で、そんなことを気にする余裕すら無かったのに、急に冷静になってしまいました。













ああそうか、俺にとって昇進は、得るものよりも失うもののほうが圧倒的に多いのか、と気が付きました。



そりゃ、メリットだけ考えたら昇進したほうがいいに決まってます。
給料も上がるし、安泰だし、社会的信用もそれなりに
高いし、仕事の幅は広がる。




でも、デメリットもある。
今まであって当然だと思っていた時間や自由は失われ、そのストレスによる過食で体型がキープ出来なくなる。精神衛生上も宜しくない。


なにより虫に手が回らない。




ああそうか、俺にとって昇進は、得るものよりも失うもののほうが圧倒的に多いのか。




そして、最終的に昇進を決断したのは自分であり、昇進を勧めてくれた上司は何の責任も取らないし、全ては自分で背負う。



ユニクロの社長である柳井正さんは
メリットとデメリットの両方を考えて選択することが、計算をするということだ」と言っていました。



その通りでした。虫と昇進、2つは取れない。
2つを同時に今の熱量で維持するのは、どう考えても無理がある。


得るものと失うものを天秤にかけ、どちらを取るべきか、決めるのは自分。

よく聞くような話ですが、自分の話としてここまで真剣に考えたのは初めてです。




ひとまず、年末になったら長期休暇で家に帰れるので、それまで更新が少なくなるかも知れません。
しかし、虫に対するモチベーションは全く衰えていないので、少〜しだけ期待していて頂けたら嬉しいです。それでは。

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