上翅の金属のような光沢が前胸背板にも乗っているニジイロクワガタのパターン、通称ピカール。
恐らくパターンの確立から10年以上経過しており、今ではノーマルの他、レッド、グリーン、紫紺などでも前胸背板のピカピカに光った個体が流通している。
GOKUSAISHIKI でも相当数飼育しており、販売もさせて頂いている。

このピカール、皆様もご存知のとおり相当に美しい。誰が見ても相当に美しい。ピカピカに光っていて綺麗。わかりやすい美しさで殴られたような気分になる。爽快だ。
特に紫紺ピカールは群を抜いて完成度が高い。光沢感が他のピカールとはまるで違う。これは、あるブリーダーさんが厳選とインブリードを重ねて作られた努力の結果であり、現在流通している強光沢の紫紺ピカールのほとんどには、この血統が入っていると僕は考える(GOKUSAISHIKIの紫紺ピカールも、CBF3で購入した個体から厳選したり別ラインを入れて引き継いでいる)。

当方では紫紺グリーンピカールとよんでいるパターン。グリーンピカールと紫紺ピカールのかけあわせによるパターンの一つ
約3年前、おそらくこの完成度が高い(完成しているといっていい)紫紺ピカールをブリーダーさんが販売した頃からピカールバブルが起きた。いや、もっと前からピカールは人気で高騰していたけれど、3年前に更にピカールの波がきたような印象だ。このバブルが、ピカール一強の価値観を強めていったと僕は考えている。

紫紺ピカールとレッド系をかけあわせると、このような色味が出ることがある。レッド系をかけあわせなくても出ることもある
まるで高級車のような光沢を放つ、深い紫のクワガタ。他にも強烈な光沢と色彩をもつ甲虫はいるが、丸く盛り上がった滑らかな前胸に、自分の姿まで映り込んでしまうような光沢は本種ならではだろう。
ノーマルのピカールも、金色に光っており大変に美しい。レッドピカールもすごいが、紫紺やノーマルに比べると光沢でやや劣る。赤み(黄土色み)を強くしようとすると、光沢が弱まる。光沢と赤みの両立にはもう少し時間がかかるだろうと思われる。

さて、ここまで読んでいただいた方はお分かりだと思う。僕はピカールが大好きだ。突然変異的に現れた前胸背板が上翅同様の光沢をもつ個体を、絶やさずに累代し、流通させたショップさんは、ニジイロクワガタ史において欠かすことの出来ないエピソードといえるだろう。そしてそれを入手し、別色でも光沢化させた多くのブリーダー。こうしてニジイロクワガタは、日々新たな形質を獲得していくのだ。
ここまでピカール愛を語らせて頂いた(と僕は思っている)。次は、それによって起きつつある弊害について。
弊害とは「ピカールが流行り過ぎることによる、非ピカールの駆逐」だ。今ヤフオクで「ニジイロクワガタ」と検索すると、ピカール系の出品の多さに驚くに違いない。10年前はもっと非ピカール系の出品で溢れていた。非光沢のノーマル、レッド、ダークレッド、グリーン、紫紺、紫紺グリーンなどが、今より流通していた。ではなぜ少なくなったのか?

ピカールでも青紋でもホワイトアイでもないニジイロクワガタの出品、少なくなったよね…
ピカールのほうが高く売れる、というのが大きな理由の一つだろう。ピカールが強すぎる。売れないものが淘汰され、売れるものが増えていくのは資本主義の基本だ。売れないものを量産したいと思うのは、ごく一部のもの好きだけだ。
「別にいいじゃないか、ピカールしか出回らず、市場がピカール一色になっても」という人もいるかもしれない。確かに。少なくとも僕はこの問題を「駄目だ」と一方的に言うことは出来ない。なぜなら僕もピカールをブリードし、流通させていて、市場のピカール一強化の一端を担っているからだ。加えて、ピカールばかりブリードし、流通させている人を非難するような思いも全くない。そういう人がたくさんいるからこそ、ニジイロクワガタのブリード熱が維持されるのだ。

多くの人がブリードするからこそ、沢山のラインか流通して健康な血が維持されるという恩恵は大きい
大量に非ピカール系とピカール系をブリードしている経験から僕が懸念しているのは「非ピカール系が淘汰されること」だ。
まず、ピカール系(前胸背板に光沢のあるニジイロクワガタ全て)は、非ピカール系(前胸背板に光沢のないニジイロクワガタの全て)と比べて上翅幅が広く、腹部が大きくなる。もちろん血統や色によって上翅幅には個体差があるが、数百頭と個体を見比べると「ピカール系は非ピカール系と比べて上翅幅が広い」という傾向は明らかだ(ゴールドピカールは上翅幅が広がりやすく、青系紫紺ピカールは比較的広がりにくいなどの差はある)。

兄弟間、親子間インブリードを避け、種親選定に体型を意識したこともあってか、今期の紫紺ピカールの体型はだいぶ改善された。それでも非ピカールと比較すると横幅は大きく、アゴは伸びにくい
「腹部が大きくなりやすい」ということは、羽化不全率が高まるということであり、羽化サイズが望めないということでもある。僕のブリードしている体感的には、ざっくり60mmで羽化不全の壁がある。59mmまでは問題なく完品羽化するが、60mmを超えると完品率の雲行きが怪しくなってくる。また、幼虫体重でいうと、最大体重が23gを超えた個体の羽化不全率はかなり高い。非ピカールの23g程度なら、何の問題もなく完品羽化するし、65mmも普通に望める。


上:紫紺グリーンピカール65mm
下:青紋紫紺60mm
体型の違いは歴然
ヤフオクで63mm以上の強光沢を持ったピカールの出品を見たことがあるだろうか?僕は多分ない。あっても微光沢の「非ピカール系の血の割合が多い」個体に限られるだろう。ここにピカール系の限界を感じる。
限界を感じるからといって、ピカール系の存続が危ういかというと、そうは思わない。ピカール系は多産な印象だし、全長60mmと幼虫体重23gの境界を超えず、極端なインブリードを続けない限り、今後の存続は問題ないだろうと考える。
ただ65mm以上やレコードを狙う場合に、ピカール系は極めて不利であることに違いはない。そして、ピカール一強化によって非ピカールが減り、レコードを狙える素質のある血を入手しにくくなる傾向は、今後一層強くなるだろう。特に、新規参入で紫紺で65mmを狙うのはかなり難しいのではないかと思う。ヤフオクで紫紺を入手しようにも99%紫紺ピカールしかいないからだ。

2024年種親の紫紺(青系)63mm
上翅は細く平らで引き締まっていた
ピカールが好きだ。ピカールは美しい。しかしピカールしか流通しなくなるのは、大型完品個体の追求においては致命的だ。ピカールしかいなくなったニジイロクワガタ界隈は、果たして喜べるのか?かといって自分もピカールを流通させている。ピカールを流通させている人にはもちろんなんの非難もない。かといってピカールしかいなくなると懸念があって…
と、自己矛盾のループにはまっている。正解はこれ、と言うことは僕には出来ない。しかし一点だけ安心(?)
して頂きたいのは、GOKUSAISHIKIは毎年、非ピカール系も累代を続けている、ということだ。青紋系の他、ピカールでも青紋でもないノーマル、レッド、グリーン、紫紺の累代は続けている。兄弟間などの近いインブリードは避け、体型のよい個体を選んでブリードしている。

青紋紫紺

レッド
こういう「大人気化したパターンばかり流通し、そうでないパターンが淘汰される」現象は、メダカや鯉など他の鑑賞生物にもよくあることらしい。

最近の個人的ブームは青紋派生
「ピカールもいいけど、やっぱ非光沢だよね」と考える人が増えたらいいな…とまでは思わないけれど、もう少しその傾向があっても…いや、それは人様に強要することではないな…とりあえず自分は、ピカールと共に非ピカールも累代し続けよう。最近は、そんな厄介で複雑な重いを抱きながらブリードしています。
恐らくパターンの確立から10年以上経過しており、今ではノーマルの他、レッド、グリーン、紫紺などでも前胸背板のピカピカに光った個体が流通している。
GOKUSAISHIKI でも相当数飼育しており、販売もさせて頂いている。

このピカール、皆様もご存知のとおり相当に美しい。誰が見ても相当に美しい。ピカピカに光っていて綺麗。わかりやすい美しさで殴られたような気分になる。爽快だ。
特に紫紺ピカールは群を抜いて完成度が高い。光沢感が他のピカールとはまるで違う。これは、あるブリーダーさんが厳選とインブリードを重ねて作られた努力の結果であり、現在流通している強光沢の紫紺ピカールのほとんどには、この血統が入っていると僕は考える(GOKUSAISHIKIの紫紺ピカールも、CBF3で購入した個体から厳選したり別ラインを入れて引き継いでいる)。

当方では紫紺グリーンピカールとよんでいるパターン。グリーンピカールと紫紺ピカールのかけあわせによるパターンの一つ
約3年前、おそらくこの完成度が高い(完成しているといっていい)紫紺ピカールをブリーダーさんが販売した頃からピカールバブルが起きた。いや、もっと前からピカールは人気で高騰していたけれど、3年前に更にピカールの波がきたような印象だ。このバブルが、ピカール一強の価値観を強めていったと僕は考えている。

紫紺ピカールとレッド系をかけあわせると、このような色味が出ることがある。レッド系をかけあわせなくても出ることもある
まるで高級車のような光沢を放つ、深い紫のクワガタ。他にも強烈な光沢と色彩をもつ甲虫はいるが、丸く盛り上がった滑らかな前胸に、自分の姿まで映り込んでしまうような光沢は本種ならではだろう。
ノーマルのピカールも、金色に光っており大変に美しい。レッドピカールもすごいが、紫紺やノーマルに比べると光沢でやや劣る。赤み(黄土色み)を強くしようとすると、光沢が弱まる。光沢と赤みの両立にはもう少し時間がかかるだろうと思われる。

さて、ここまで読んでいただいた方はお分かりだと思う。僕はピカールが大好きだ。突然変異的に現れた前胸背板が上翅同様の光沢をもつ個体を、絶やさずに累代し、流通させたショップさんは、ニジイロクワガタ史において欠かすことの出来ないエピソードといえるだろう。そしてそれを入手し、別色でも光沢化させた多くのブリーダー。こうしてニジイロクワガタは、日々新たな形質を獲得していくのだ。
ここまでピカール愛を語らせて頂いた(と僕は思っている)。次は、それによって起きつつある弊害について。
弊害とは「ピカールが流行り過ぎることによる、非ピカールの駆逐」だ。今ヤフオクで「ニジイロクワガタ」と検索すると、ピカール系の出品の多さに驚くに違いない。10年前はもっと非ピカール系の出品で溢れていた。非光沢のノーマル、レッド、ダークレッド、グリーン、紫紺、紫紺グリーンなどが、今より流通していた。ではなぜ少なくなったのか?

ピカールでも青紋でもホワイトアイでもないニジイロクワガタの出品、少なくなったよね…
ピカールのほうが高く売れる、というのが大きな理由の一つだろう。ピカールが強すぎる。売れないものが淘汰され、売れるものが増えていくのは資本主義の基本だ。売れないものを量産したいと思うのは、ごく一部のもの好きだけだ。
「別にいいじゃないか、ピカールしか出回らず、市場がピカール一色になっても」という人もいるかもしれない。確かに。少なくとも僕はこの問題を「駄目だ」と一方的に言うことは出来ない。なぜなら僕もピカールをブリードし、流通させていて、市場のピカール一強化の一端を担っているからだ。加えて、ピカールばかりブリードし、流通させている人を非難するような思いも全くない。そういう人がたくさんいるからこそ、ニジイロクワガタのブリード熱が維持されるのだ。

多くの人がブリードするからこそ、沢山のラインか流通して健康な血が維持されるという恩恵は大きい
大量に非ピカール系とピカール系をブリードしている経験から僕が懸念しているのは「非ピカール系が淘汰されること」だ。
まず、ピカール系(前胸背板に光沢のあるニジイロクワガタ全て)は、非ピカール系(前胸背板に光沢のないニジイロクワガタの全て)と比べて上翅幅が広く、腹部が大きくなる。もちろん血統や色によって上翅幅には個体差があるが、数百頭と個体を見比べると「ピカール系は非ピカール系と比べて上翅幅が広い」という傾向は明らかだ(ゴールドピカールは上翅幅が広がりやすく、青系紫紺ピカールは比較的広がりにくいなどの差はある)。

兄弟間、親子間インブリードを避け、種親選定に体型を意識したこともあってか、今期の紫紺ピカールの体型はだいぶ改善された。それでも非ピカールと比較すると横幅は大きく、アゴは伸びにくい
「腹部が大きくなりやすい」ということは、羽化不全率が高まるということであり、羽化サイズが望めないということでもある。僕のブリードしている体感的には、ざっくり60mmで羽化不全の壁がある。59mmまでは問題なく完品羽化するが、60mmを超えると完品率の雲行きが怪しくなってくる。また、幼虫体重でいうと、最大体重が23gを超えた個体の羽化不全率はかなり高い。非ピカールの23g程度なら、何の問題もなく完品羽化するし、65mmも普通に望める。


上:紫紺グリーンピカール65mm
下:青紋紫紺60mm
体型の違いは歴然
ヤフオクで63mm以上の強光沢を持ったピカールの出品を見たことがあるだろうか?僕は多分ない。あっても微光沢の「非ピカール系の血の割合が多い」個体に限られるだろう。ここにピカール系の限界を感じる。
限界を感じるからといって、ピカール系の存続が危ういかというと、そうは思わない。ピカール系は多産な印象だし、全長60mmと幼虫体重23gの境界を超えず、極端なインブリードを続けない限り、今後の存続は問題ないだろうと考える。
ただ65mm以上やレコードを狙う場合に、ピカール系は極めて不利であることに違いはない。そして、ピカール一強化によって非ピカールが減り、レコードを狙える素質のある血を入手しにくくなる傾向は、今後一層強くなるだろう。特に、新規参入で紫紺で65mmを狙うのはかなり難しいのではないかと思う。ヤフオクで紫紺を入手しようにも99%紫紺ピカールしかいないからだ。

2024年種親の紫紺(青系)63mm
上翅は細く平らで引き締まっていた
ピカールが好きだ。ピカールは美しい。しかしピカールしか流通しなくなるのは、大型完品個体の追求においては致命的だ。ピカールしかいなくなったニジイロクワガタ界隈は、果たして喜べるのか?かといって自分もピカールを流通させている。ピカールを流通させている人にはもちろんなんの非難もない。かといってピカールしかいなくなると懸念があって…
と、自己矛盾のループにはまっている。正解はこれ、と言うことは僕には出来ない。しかし一点だけ安心(?)
して頂きたいのは、GOKUSAISHIKIは毎年、非ピカール系も累代を続けている、ということだ。青紋系の他、ピカールでも青紋でもないノーマル、レッド、グリーン、紫紺の累代は続けている。兄弟間などの近いインブリードは避け、体型のよい個体を選んでブリードしている。

青紋紫紺

レッド
こういう「大人気化したパターンばかり流通し、そうでないパターンが淘汰される」現象は、メダカや鯉など他の鑑賞生物にもよくあることらしい。

最近の個人的ブームは青紋派生
「ピカールもいいけど、やっぱ非光沢だよね」と考える人が増えたらいいな…とまでは思わないけれど、もう少しその傾向があっても…いや、それは人様に強要することではないな…とりあえず自分は、ピカールと共に非ピカールも累代し続けよう。最近は、そんな厄介で複雑な重いを抱きながらブリードしています。









